なんと,前オーナーの方からデロリアン購入の経緯を教えていただきました。
 その内容があまりにも面白かったので,許可をいただきここに掲載することに。
 快く承諾していただいき,本当にありがとうございます。

 (以降,いただいた文章をそのまま掲載しております。)



デロリアンを初めて見たのは1989年の大黒埠頭でした。私は並行輸入車を扱う車屋に
勤めており、商品を港まで引取りに行く事が多かったのです。
私は当時デロリアンの事を知らず、見た時の感動はかなり鮮明に記憶しています。

商品のある倉庫前に「銀色のスーパーカー」を確認、(形状から勝手に認定しました)
隣の「赤い車」を無視、すごい勢いで「さわりまくりました」。数分後、「銀色の不
思議な車」という評価になりましたが、今でも「その感動」は覚えています。
ちなみに隣の「赤い車」はテスタロッサでした。銀色の不思議な車は、もちろ
んDMC12です。

その後、常に頭には残っているのですが、様々な魅力ある車たちに邪魔され、購入ま
で辿り着きませんでした。バイパーを手放し、再びバイパーが欲しいと思った時に
(バイパーは2台目です)感じた事が、「欲しい時に物がない」という当たり前の事
でした。しかし、この思いがデロリアン購入の強い引き金になりました。

業者間のオークションに「稀」に出品される事はあるのですが、車屋という仕事も、
相手がデロリアンではたいして役に立ちません。2台目のバイパーの部品を個人輸入
した事がきっかけで、海外からの輸入という結論になりました。

2003年、ウェブ上で相場や、タマ数などの確認作業をしていましたが、当時仕事が忙
しく、思うようにならない状況が続きました。

2004年、自分の店兼、バイパーのガレージとして借りた場所での準備が忙しくなり、
デロリアン入手は保留状態になりました。

2005年、出費がかさみ、デロリアンへつぎ込める資金が不足。しかし、今後さらに
「入手困難な状況」になるという思いは、とりあえず「車体確保」という形へ変化し
ていきました。

同年4月、知人がアメリカへ車の買い付けに行くというので連絡。以後、会話は覚え
ている限り、忠実に再現します。

「あー、ついでにデロリアン買ってきてくれないですか?到着200万くらいで。あー、
マニュアル車がいいですね」

価格制限をかけた手前、さらっとオーダー。
しかし・・・かっこつけても意味がない。これだけの会話で今までの思いを決めるの
か?いや!ここは細かいぐらいに指示を出そう!

「手数料いらないですよね?ついでですもんね?あー、一応、写真は下さい。えーと、
あー、あと状態も教えて下さい。簡単でいいっすから、簡単で」

私と彼の関係上、これ以上の会話は不可能。時間をかけた情熱も、たったの数分で、
ピザの注文より簡単な形で終了。

後日、メールと写真が届きました。そのメールによると「オーナーはオーナーズクラ
ブ(どこの?)に所属する70才の男性。腰をいため泣く泣く手放すという」なんとも
状態がよさそうなシチュエーションではないですか。そうか、腰をいためたのならマ
ニュアルは厳しいよな、と納得して写真をみていると、デロリアンの横に930が写っ
ていました。

私は返信しました。「いいじゃないですか、これでお願いします。ところで930も所
有しているオーナーなんですか?」対する返事「そうです。930のターボですね。モ
ノホンの。これはまだまだ乗るそうです」・・・

ターボっていったらマニュアルじゃん・・・

同年7月、港についたとの連絡。予備検査までのお願いだから、しばらく待つ事に。
16年前に見た、同じ港にある。とても不思議な気持と達成感でした。

同年8月、予備検査終了の報告が携帯にかかってきました。

私「どうも、お手数かけました。自走できるんですよね?」
□「もちろん」
私「じゃ、仮ナンバーもって行きます」
□「え、自走するの?」
私「え?ダメすか?」
□「・・ちょっと待って」
しばらくして
□「じゃあ、待ってます」

何だか不安です。

こちらのスタッフ同行で引取りに、他の車のオーダー分の話しがおわり、御対面。
ここでも当然、かっこつけました。
「ふーん、いいんじゃん」
この時、内心では、価格をわすれ「粗」ばかりつついていました。
「新車じゃないんだから」というつっこみを自分でいれながら・・・

ドアを開けます。
私「あれ?ダンパー交換するって話しでは?」
□「前オーナーとはそういう話しだったんですが、このパーツ自分でつけろって」
私「あれ?ウェザーストリップの新品ってやつは?」
□「前オーナーの話しでは車につんでおいたって事なんですが、ないんだ」
私「あれ?おまけ部品ってこれだけ?」
□「前オーナーの話しでは・・・(略)」

前オーナーの爺さんはかなりいい加減と判断。

エンジンをかけ、アイドルの確認。かなりラフでした。タペットの音も気になるレベ
ルです。
私「こんな感じですか?」
□「うん、こんな感じ」
私「え?エンジン好調ってのは?」
□「言ったっけ?」

この日は夜でしたが、かなり暑くエアコンをオン。グォーとブロアファンの音ととも
にモァーと暑い空気。
私「あれ?エアコンだめじゃん」
□「まあ、効くほうがおかしいよ」
私「でも、エアコンばっちりって言ってなかった?」
□「あー、そうだったね。多分ガス抜けだと思うよ」
私「ま、エアコン効いても、つけて走らないからいいけど」
□「そうだよね、ま、気をつけて」
私「書類は?」
□「あ、いけね、ちょっと待ってて」

爺さん、あなた、どちらもいい加減。

甲州街道を新宿方面へ環状八号線を目指し走る。以前に乗ったデロリアン(3万ドル
以上で買えなかった)と比べてしまい、チェックよりもこれからの整備にあれこれ考
えを巡らせていました。後を同行していたスタッフがはぐれ、路肩へ駐車。モァーっ
と暑い空気と共に車外へ。ドアが下がってしまうのでドアを持ったまま、携帯で連絡。

うーん、ほとんどの人が見ている、気持いいもんです。
歩道を歩いていた女性の視線がデロリアンへ。目が合ったので軽く会釈。すると、こ
ちらへ歩いてきます。しまった!今の私は非常にラフな格好だ。ラフもラフ。ドンキ
でかった500円のパンツに同じく900円のサンダル。汗まみれのTシャツは異臭つきだ。

私「じゃあ、そのまま来て。甲州街道沿いだから」
そう言い、携帯を切り女性の方へ向き直ると、女性が言った。
□「大丈夫ですか?」
私「え?」

脇、汗すごいから手を降ろしたい。けど、ドアぶらりはかっこ悪いし。

□「故障ですか?」

そういう事か。

私「あ、大丈夫ですよ。」

その人はデロリアンを携帯で撮影し行ってしまったが、私を邪魔だといわんばかりの
アングル決め。私も好きでこうしているのではない。私が写ってない事を祈り、見送
ると、同行スタッフ到着。
疲れた手をおろし、これでは「コンビニの駐車上で、ドアをはねあげ、サンダル姿で
タバコを買う」という夢の実現が困難なのでガレージまで直行。となりました。

走行時の傾きや、制動時の動きなどを後から確認してもらっていたのだが、彼による
と問題ないという事だ。およそ、1時間の走行を終え店(ガレージ)へと到着。

バイパーの横へ鎮座させ、エンジンカット。私は完全にオーバーヒート。
以後、このデロリアンは日本の道路に出る事はありませんでした。

Main