0017 青春 (2004/2/24)
高校を辞めて、バイトやったりブラブラしてた頃。暇なモンで夜中によくラジオを聞いていた。KBS京都を聞いてたのも地元の放送局だった為に綺麗に入る電波ってだけの意味だった。ある番組の中で『乱調秋田音頭』なる唄が面白いって意味で話題になって、毎週流れてたので何の気無しに覚えてしまっていた。秋田県の方言で歌う可笑しな唄だったので、たぶんコミックソングなんだろうと思ってた。それが、今回のテーマとなる友川かずきとの最初の出会いだった。

バイトの帰りにレコード店へ行くと、妙に端正な顔だちのジャケットに目がいってしまった。タイトルに『やっと1枚目』とか書いてある…。顔は2枚目なのにアルバムは1枚目のようである。名前を見た。『友川かずき』と書いてある…。まったく知らない名だ。取りあえずフォークの欄に置いてあったので、試しに買って聴いてみようと思いレジに持って行った。その中に『乱調秋田音頭』が入っているコトなど知りもしないで…。

帰って来てジャケットをレコード店の袋から取り出し、レコードをプレイヤーに置いて針を落とした。1曲目に『青春』とかいう唄が入っているみたいだ。実に安直なタイトルである。どうせ唄も安直なメロディーなのだろう…そう思った。しかし、意外な前奏が聴こえてきたのである。マイナーなコードでジャン〜ジャカジャカ…ジャン〜ジャカジャカ…と2拍子の重たい伴奏が流れたかと思うといきなり叫び声が飛び出した。

パチンコ屋のぉ〜〜〜!パチンコ屋の前を〜〜〜!
ギターをぶら下げて〜、明日と一緒に歩いているのは〜!
あれはお前じゃないかぁ〜〜〜!?

もう、これは唄じゃ無い。しかしその叫び声に私は、そんな突っ込みを入れるどころか、ジ〜〜〜ッと聞き入ってしまったのだ。熱くなる熱くなる…ドンドン熱くなるモノを感じずにはいられなかった。これは魂だ、魂の叫びなんだ!私の直感はそう判断した。『青春』が終わった後、私はまだ無言のまま呆然としていた。いつもなら、買って来たばかりのレコードは一応全部聴いてから、気に入ったモノをピックアップしてまた聴くのだがその時は違った。針を上げて、再び『青春』を聴き直したのである。何だったんだ?今のは?もう1度聴き直さないといられなかったのだ。

『青春』以外の曲はちゃんとメロディアスな曲で、暗いけれど素直なメロディーのモノが多く聴きやすかった。アレンジがダウンタウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童がやってたからかも知れないが、とにかく聴きやすかった。でも、最初に聴いた『青春』程のインパクトが無くて、逆にモノ足り無さを感じてしまった。そうして、次々に聴いていくと、あの『乱調秋田音頭』が出て来て、私は再びおったまげたのだった。おそらく今まででこんなに意外なアルバムを聴いたコトは、これが初めてだったであろう。

さて、それから数年後、友川かずきの曲に今度はテレビで再会した。人気ドラマ『金八先生』の中で使われたのである。その回だけだったみたいだが、あの叫ぶような、あのアングラ劇団の台詞のような雰囲気は健在で私は嬉しかった。その後、今度は島田紳助の音楽番組に本人が出演しているのも偶然に見てしまった。例のジャケットから来る男前のイメージとは違って、彼は陽気な東北の酔っ払いだった。

彼のコトをネットで調べてみると、「詩人であり、歌手であり、作曲家であり、画家であり、エッセイストで、俳優。」と一杯の肩書きが書かれてあり、さらに「競輪解説者であり、パチスロ評論家でもある。」などと書かれている。食えなくていろいろやって来たのだ…と、苦労を想像せずには読めない紹介文で涙を誘う。

でも、実際に広く売れる人ではないけど確実なファンは居て、ドップリ漬かってしまってる濃い〜ファンに見守られているコトは確かなようだ。

因に、友川かずきが歌う切っ掛けとなったのは、岡林信康の『チューリップのアップリケ」だったそうな。赤ちょうちんで聴きながら涙が止まらなかったんだそうな。そう言われてみると、確かに岡林の流れを引いているトコロがあるかも知れないな…。

『青春』機会があったら是非聴いて欲しい唄(叫び)です。