011 喫茶店

ファーストフード店に押されて、その存在さえ減ってきているが、喫茶店は私の世代にとって無くてはならない場所だった。そんな喫茶店が一つまた一つと街から姿を消して行っているのは、何と淋しいコトだろう…。しかし、落ち着ける良い店というのは数少ないファンによって支えられ、今でもひっそりと営業していたりする。篭りっ子になってしまい、今はもうあまり喫茶店を利用しなくなった私だが、そんな店を見かけるとホッするのだった。

20代の頃と言えば、いつも喫茶店でコーヒーを飲んでタバコを燻らす自分が浮ぶ。友人と二人で、いろんなコトを話し合っていた。当時、マンガ家になりたいという夢を抱きながら安いイラストを描いていた私と、デザインをバリバリこなしていたM氏は、意見をぶつけ合ったり、冗談を言い合ったり、夢を語りあったりしていた。それが毎日続くのだが決して飽きると言うコトは無かった。

しかし、それが30を越えた頃からだろうか、少しずつ少しずつ二人の距離が離れだした。M氏は相変わらずデザインをこなしつづけてるのに比べ、私は自分の居場所を探すので精一杯になり、いつしかイラストからも遠ざかっていたのだ。

喫茶店には行かなくなった。朝まで語り続けていた日課がスケジュール表から消え、私は部屋に閉じ篭るようになりマンガを描きだした。その描いた作品が、ある有名マンガ家の目に止まり、私は念願のマンガ家デビューを果たしていた。ところが、これが続かない。編集長から連載の電話までいただいたのに、途端に私は描けなくなった。先にデビューを果たした彼女(現在妻)は、何で描かないの?こんなチャンスは来ないわヨ…と何度も励ましてくれるのだが、描きたくても描くモノが浮んでこなくなっていた。私は逃げるように違うコトを始めた。友人が譲ってくれたMACを来る日も来る日もいじり続けたのだ。そうして1年後には自作のソフトを某社から発表し、気が付くと私の肩書きはソフト作家になっていた。

何なんだ私は?一体何がしたいんだ?

そして今、またイラストを描いている自分がいる。でも、気付いたコトがある。何を手段として生業にしたいのか?それは今でも解らないが、でも、きっとそれは何でもよくって、表現したいモノをしたい形でやって行ければ良いのだと…。そして、その表現したいモノの全ては、あの20代の頃の喫茶店で生まれてきたモノなんだと………。


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