目次へ 戻る 40/57 次へ

皿山遠景・II 第2の石器時代へ
ファイン・セラミックス
カット: 柴田コレクションから
ファイン・セラミックスという新素材に世間が注目しだしたのは昭和56年あたりからです。4月に打ち上げられたスぺース・シャトル「コロンビア号」の外面が7割までそれに被われていることを知ったからです。さらに翌年の元日の新聞に「陶器エンジンをつけた乗用車」という大きな見出しが踊っていました。世間は焼き物の世界に革命ともいうべき現象が起きていることを感じました。

車の部材にファイン・セラミックスを用いたというので新聞は「陶器エンジン」という見出しをつけたわけですが、そもそもファイン・セラミックスとはどういうものでしょうか。その定義は国によって違いますが、わが国の通産省は次のようにいっています。
「陶磁器、ガラス、セメントなど天然土質を原料としたクラシックセラミックスあるいはトラディショナル(伝統的)セラミックスに対して、精製された微粉末を原料とし、材料の微組織を高度に制御しつつ精度よく製造した付加価値の高い無機材料をファインセラミックス、ニューセラミックスあるいはハイパフォーマンスセラミックスという」

ファイン・セラミックスは1970年代から開発にスピードがかかりました。現状は電子材料7、構造材料3くらいの比率だといわれます。アルミナ、ジルコニアなど人工的な合成原料による非金属の、硬い、さびない、熱や摩擦に強いなどの特性を生かして用途は年々広がっています。

ただどちらかといえば、最初のころに話題になった包丁とかハサミといった、目に見える単品よりも、装置の中に組み込まれる、目にみえない部品としての役割が大きくなっているようです。

私たちの暮らしにファイン・セミックスはいろいろな形で入って来ています。パソコン、ビデオなどの電子機器、最近はやりの携帯電話にも使われています。環境浄化はいまや重要課題ですが、汚水処理設備にも欠かせず、トイレや洗面器にも使われています。医療の分野では人工関節、人工歯骨、歯冠など。レジャー用具ではテニスのラケット、ゴルフのクラブ、スキー板など。お洒落ではルビーやサファイヤに似た人工宝石など。

佐賀県でも有田の香蘭社、、岩尾磁器、有田物産、田中転写をはじめ関連を含めて15社がこの分野に参入しています。
それを先導しているのが昭和57年に発足した有田ニューセラミックス研究会です。これに32の企業・団体などが参加してファイン・セラミックスの可能性をさぐっています。磁器のふるさと有田に新風が起ころうとしています。
(田中貴代)
写真: セラミック工場の内部・研磨機
▲香蘭社のセラミック工場の内部・研磨機

写真: ファイン・セラミックスの製品
▲ファイン・セラミックスの製品(香蘭社製)(左からペンチ・包丁・上方は人工歯骨・右二つは工業用カッター)
写真: 国際ファインセラミックスシンポジウムから
▲九州陶磁文化館で開催された国際ファインセラミックスシンポジウムから(平成4年11月11日〜13日)

*ファイン(ニュー)・セラミックス
古来の窯業製品が天然の原料を主にし、機能が容器的なものであったのに対し、アルミナなどの精製された原料を用いてつくった、緻密で精細な高性能のセラミックスを総称していう。それらは、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、半導体性、その他特定の機能を最大限にもっており、精密機械、半導体、医療用などの材料として開発された。

セラミックスとは
解釈は色々で、イギリスやヨーロツパ諸国では「まず成形され次に熱によって硬化された無機物質からなる製品」という解釈を基本にし、陶磁器製品と耐火物に限られている。これに対してアメリカのセラミックス学会では「無機・非金属を原料とした製造に関する技術および芸術で、製造あるいは使用中に高温度(約540度以上)を受ける製品と材料」と定義し、日本はこれに従っている。ここでは陶磁器と耐火物、セメント、ガラス、ほうろう、合成宝石などが含まれる。
第2の石器時代
戦前からタルク(天然の含水ケイ酸マグネシウム・滑石)を原料としたステアタイト(滑石磁器)やアルミナを主力としたジンターコルンド(アルミナ磁器)などをつくっていた。これらは無線機器や航空用内燃機関の部品や特殊な保護管として工業化され、戦時中には中小陶業者でも軍需用としてつくった。飛躍的に発展するのは戦後の30年代から。「第2の石器時代」が到来した。

アルミナ磁器の急展開がそれを代表する。これを原料にして従来の陶磁器焼成法を応用して焼き固めた切除器具は、金属製のものより格段に性能が良い。石器のもっていた硬さと、土器を焼く工法との結合が生んだ新製品で、石器時代のそれが天然の熱処理によってつくられたのに対し、こちらは人為的な熱処理によるから「人工石器」とよぶことができる。一方、アルミナの絶縁性という特徴を生かした製品の絶縁スペーサー(電気製品の間隔をとるための挿入板)は、集積回路基板へと発展した。切除工具は精密機械工業の、絶縁体は電子情報産業の礎石となって産業の技術革新を促した。

目次へ 戻る 40/57 次へ
Ads by TOK2